尾びれを失ったメスのバンドウイルカ、フジのために人工尾びれを作ることとなった薬師寺さん。世界でも前例がないこの挑戦の成功の裏には、薬師寺さんの知識と経験が大いに活かされました。
── フジの尾びれを作る際には、米国でイルカの生態について学んだ経験が役立ったと伺いましたが、どちらで勉強されたのでしょうか?
フロリダにあるドルフィン・リサーチ・センター(通称、DRC)というところでイルカについて学びました。
『わんぱくフリッパー』ってご存知ですか。
フリッパーという名前のバンドウイルカが主人公で、日本でも放送された北米の TV ドラマです。
このドラマはここで撮影されました。
イルカを野生に近い形で保護・飼育しつつ、海生哺乳類の生態や環境について学ぶことがきるので、世界中から多くの人が訪れます。
病気の子供とイルカについての研究もさかんです。
── どんなことを学ばれたのでしょうか?
実際にイルカに触りながら、イルカの生態、生きている環境について学びました。
例えば、イルカの尾びれは、泳ぐとすごく熱くなるんです。
泳いだ後に熱くなった血液が尾びれに集まって放熱して、生殖器を守る仕組みになっているからです。
それから、こんな話もあります。イルカは男性より女性、女性より子供、子供より妊婦さんが好きと言われています。
── それから、薬師寺さんは、イルカと 15~6年も泳いでいらっしゃるそうですが、泳ぎ始めたきっかけはなんだったのでしょうか?
すでにお話したように、父親の家業を継いで会社経営をしていた時に、イルカを好きになって色々と調べているうちに、フリーダイビングの記録保持者の方と知り合いになったんです。
その方にイルカのことで色々とアドバイスをもらって、イルカと泳ぐために “モノフィン” というフィンを履いて泳いだらと言われ、始めました。今も週に2回は潜るトレーニングをしています。
── モノフィンは普通のフィンとは違って、特殊な使い方なのですか?
合う、合わないがあって、すごい水泳がうまい人に履かせてみても溺れそうになる人もいるんです。
けど、そこそこ泳げるくらいの人でも、つけたらすごく合う人もいるし。
── 両足に一緒につけるのでしょうか?
はい、両足一緒に、人魚みたいに。
── モノフィンの “モノ” は “一つ” という意味ですね。
両足にそれぞれつけるフィンではなくて、人魚みたいに履くフィンなのですね。
そうです。
すごく速いんですよ。
競技者はフロントシュノーケルという特殊なシュノーケルをつけるんですけど、僕はゴーグルのみでシュノーケルは使いません。
── 素潜りで、クジラやイルカがいるところまで行くことができるのでしょうか?
頑張らないと無理ですけどね(笑) 。
ウェットスーツに浮力があるので、普通は深く潜れないんですよ。
でも僕はモノフィンをはいているので、浮力を無視して、潜っちゃいます。
モノフィンで色んな海で色んなイルカたちと泳いできました。
クジラとも泳ぎました。
人工尾びれの製作にもモノフィンが役立ちました。
フジの尾びれを守るためのクッション材をどうするか迷った時、モノフィンを用いて考えつく限りの素材を使っては何度も泳ぎ、一番痛くないものを探しました。
その他にも、色々な場面でドルフィンキックでイルカたちと泳いだ経験が本当に役立ちました。
── イルカも触るとゴムのような感じなのでしょうか?
やや似ていますけど、体の場所で全然変わり、背中はゴムっぽいかな。
胸のあたりはやわらかいんですよ。
尾びれに関しては何百回と触りましたが、微妙な硬さで末端に向け柔らかくなっていきます。