1300年前から存在する文書が失われる危機

「正倉院文書」というものをご存じでしょうか? 国宝であり世界遺産でもある奈良県にの「正倉院」に保管されてきた文書群であり、その数は1万数千点におよびます。

文書群となっていることからもわかるように、正倉院文書は写経文書、北倉文書などいくつかの文書があるのですが、その中で西暦727年から776年までの50年近くにわたって作成された写経所文書というものがあります。

こちらは東大寺写経所で作成された帳簿類の総称なのですが、現在では手軽に使うことのできる紙も、当時は貴重品だったために、不要になった文書の裏面を帳簿として再利用したものでした。つまり、保存することを目的とした文書ではなかったのですが、奇跡的に1000年以上も残っていたのです。

このように貴重なものということもあり、国立歴史民俗博物館では、正倉院文書の精巧な複製を作成していました。30年以上前から高解像度のカメラを用いて撮影し、特殊な多色刷り技術を使って、シミや印鑑の濃さなどといったものまで忠実に再現した上で、ちゃんと紙をすいて、巻物仕立てに完成させるという非常に手間と時間のかかる手法を使って複製していたのです。

といっても、そもそも正倉院文書自体が膨大な量であるために、30年たってもようやく半分程度しか複製が完成していません。それだけ時間のかかる複製ですが、その存続が難しくなっているということが最近話題となりました。

国立歴史民俗博物館は「国立」とついていることからもわかるように、国から予算を得てさまざまな活動をしているのですが、その予算が削減され続けているために、正倉院文書の複製に使う予算の確保が難しくなり、このままだとあと50年たっても複製が終わらないというのです。

そんな状況を打破し。正倉院文書を後世に残すために、クラウドファンディングを利用した試みが行われています。こちらは開始から23日ですでに第一目標の350万円を突破するということで、多くの人が正倉院文書という貴重な文化財を保存するために協力したということになります。

クラウドファンディングという特性上、リターンが設定されているのですが、最も低価格な5,000円のものでも、完成した記念巻物にプロジェクトサポーターとして名前が記載され、それが永久保存されるという、国立歴史民俗博物館ならではのものとなっています。

他のリターンとしては、上記の内容に加えて講演つきの企画展示に招待されるというものや、完成記念の解説会及び懇親会に招待されるというもの、最も高額な50万円のものは、バックヤードツアーや感謝状の贈呈、さらに複製作成現場である工房を見学するという豪華な内容です。

第一目標が達成されたあとも第二目標を目指して、さらにクラウドファンディングは続行中です。日本の貴重な文化財を守るだけでなく、滅多にできないような経験をすることのできる今回のプロジェクト。興味を持たれた方は下記をチェックしてみてくださいね。

半世紀にわたる歴博の挑戦!正倉院に残された古代の文書を後世へ