LGBTに秘められたシャーマンの力

最近、「LGBT」という言葉を目にしたことがある、という方も多いのではないでしょうか? こちらは性の多様性とそのアイデンティティからなる文化を肯定する概念といえます。

Lは「女性同性愛者=レズビアン(Lesbian)」、Gは「男性同性愛者=ゲイ(Gay)」、Bは「両性愛者=バイセクシャル(Bisexual)」、Tは「トランスジェンダー(Transgender)」といったように、性的少数者の頭文字を組み合わせて「LGBT」となっています。

ゲイは必ずしも男性同性愛者だけを示さないのではないか、などといった面もあり、厳密な概念ではないのですが、要するに様々な性的嗜好を持つ人がいるということを表しており、そのシンボルは冒頭に掲載したレインボーフラッグとなっています。

日本でもLGBTに関する理解は年々深まってきており、渋谷区や世田谷区などでは同性カップルのパートナーシップを認めたり、死亡時保険金を同性パートナーでも受け取れるような生命保険なども登場してきています。

そんなLGBTの人たちが活躍している国として、タイが有名ですが、ある職業ではLGBTの割合が急増しているというのです。その職業とは「霊媒師」。タイやミャンマーは仏教国として知られていますが、民間の部分では古来からの精霊崇拝も続いており、そういった存在たちとの架け橋になるのが霊媒師です。

タイで霊から憑依されることによって、様々なメッセージを伝える霊媒師は「マーキー」と呼ばれていますが、このときに憑依してくる守護霊は男性が多いのだそうです。男性の身体を持つLGBTの人が、女性の格好をし、憑依してきた男の霊の言葉を男らしく伝えるというのは、複雑なように思えますが、実は古来からの伝統ともいえるのです。

元々、神託や預言といったものは女性が司るものでした。そのために、男性の神官がそのような儀式を行う場合は女性の格好をする必要があったのです。アメリカのスーパーヒーロー映画で一躍世界的な名声を得ている北欧神話の武神「ソー」も、その武器であるムジョルニアを授かるためには、女神の衣装を身につけなければなりませんでした。

ネイティブアメリカンは、同性愛者こそが、有能なウィッチメディスンであると考えていました。彼らが同性愛なのは、月の女神から女に変身するという使命を与えられたためだというわけです。

また、ローマ時代の神官達も女装をして女神からの加護を受け取っていたといわれていますが、ローマにキリスト教が浸透するに従って、強烈な父権制度と男尊女卑をベースにしたキリスト教の価値観が強くなり、このような制度は失われてしまったのです。

このように、そもそも、女性が持っている特別な霊力を得るために男性が女装をするというのは基本だったわけですので、心まで女性に近いLGBTの人が霊力を発揮するのは当然といえるでしょう。

キリスト教やユダヤ教、イスラム教、仏教など現代で大きな勢力を持っている宗教がどれもが男尊女卑的な色彩をもっているために、このような古来からの風習は忘れられがちですが、伝統的な宗教の価値観が破壊され、LGBTが認められるようになってきている現代だからこそ、タイなどのような流れが生まれるのは当然といえます。男性でも女性でもないLGBTの人々だからこそ得られるものがある、それはつまり、神や自然、精霊と繋がるシャーマンの古くて新しい役割をあらわしているのでしょう。