神の力に秘められた反物質

古来から、神の力、特に強力な神だけが使うことのできる力とされてきたものがあります。それは、日本だけでなく、世界各地で共通しているのです。

その力とは「雷」。「神鳴り」と書かれることがあることからもわかるように、神々の力として考えられてきました。ギリシャ神話の主神ゼウスが持つ力であり、北欧神話の武神トール、さらに日本の武神である建御雷など、強力な神の力として世界共通のものです。

他の自然現象に比べると、その音や輝き、時として木々を引き裂き炎を上げさせる力がパワフルだったために、古代の人は雷を怖れ、神の力として考えたといわれています。実際に、大自然の中で見る雷は、神々しさとその力強さに強い畏怖を感じさせてくれます。

そんな雷は、時代が立つにつれて電気としてその一部分が人間の制御下に置かれることになります。現代の私たちの生活は電気によって成り立っているといっても過言ではありませんので、雷が持つ力は、形を変えて私たちにも恩恵を与えてくれているといえるでしょう。

最近になって、そんな雷にまだ秘められた力があることがわかりました。それは京都大学の研究チームが発見したもので、雷が「反物質」を生成しているというもの。反物質とは、質量やスピンは全く同じにもかかわらず、素粒子の電荷などが全く逆の性質を持つ粒子で組成されているというもの。ちょっとややこしいのですが、こちらの物質は今までは自然界にはほとんど存在しないといわれていました。

しかし、今回の研究によって、落雷によって反物質が発生し、それが大気中の電子と衝突することで対消滅しガンマ線を放出するという一連の過程が確認され、自然現象である雷によって反物質が大量に生まれていることがわかったのです。ただし、反物質を生成しているきっかけとなる、落雷による強力なガンマ線がどのようにして発生しているのかは、まだ謎だということです。

反物質は対消滅を行うことによって、自分の質量の200%をエネルギーに転換できるために、反物質を操ることができれば、莫大なエネルギーを少ない質量から産み出すことができるようになります。これは燃料を積み込む空間に制限がある宇宙ロケットなど、今後の宇宙開発のための有力なエネルギー源として注目されているのです。

雷が持つ性質のひとつである電気が私たちの生活を劇的に変えたように、雷が生成している反物質が、今後、私たちの生活をさらに変化させていくのかも知れません。そして、古代の人たちはそんな雷の力を感じ取っていたのかもしれません。