最強の武神が倒せなかった神を征服した織物の神

日本神話における最強の武神として、現在でも武道関係者などに信仰されている武甕槌神、経津主神の二柱を持ってしても倒しきれなかった存在を倒したにもかかわらず、その本業は織物であるとされる不思議な存在がいます。

その神は「天羽槌雄神(あめのはづちのおのかみ)」、別名「倭文神(しとりのかみ)」とも呼ばれます。こちらの神様は『日本書紀』において、星の神であり、武神によって倒せなかった「香香背男」を征服したといわれています。

しかしながら、その本質は武神ではなく、天照大神が天岩戸に隠れたときに、捧げ物である布を作ったことから、機織りや織物を司る存在であるといわれているのです。玉串を飾るための布を織ったわけですし、イメージ的に女神っぽい感じもあるのですが、前述のエピソードから、男神である可能性が高いとされています。

どうして、機織りの神様が最強の武神が倒せなかった存在を倒すことができたのでしょうか? これには諸説あります。そのひとつが、そもそも、知られざる武神であったというもの。これは名前を「天羽雷(あめのはづち)」や「天刃槌」と書き換えることもできることからきています。「雷」の名前を持つ存在は武神が多いこともあり、ある程度納得できます。

もう一つの説は、お伽噺っぽさがありますが、ロマンチックでスピリチュアリティを感じさせるものになっています。こちらは、星の神を織物の中に封印したというもの。美しい星を織物に織り込んでしまうというのは、天の川で機を織っている織姫の逸話もありますし、ロマンチックなだけでなく、なんとなく説得力が感じられます。

このように、二面性を持ち、なおかつロマンチックでミステリアスな逸話を持つ天羽槌雄神ですが、あまり祀られている神社は多くありません。機織りの神として「倭文神社」が全国に存在していますが、そうはいっても十数社程度ですので、一度もお参りしたことがないという方も多いことでしょう。

そんな天羽槌雄神が最近になって突然知名度をあげました。昨年公開され大ヒットとなった映画『君の名は。』に登場した神社がこの神様を祀っているという設定だったのです。こちらの映画には彗星が重要なポイントとして登場するために、星の神を倒した天羽槌雄神が採用されたのでしょう。

近年になってまた知名度があがってきたミステリアスな神様、そのエネルギーを感じたい方は、どこかで「倭文神社」を見かけたら、ぜひ参拝してみてくださいね。