国家レベルの願望を成就させる最高のお経の読み方とは?

お経というのは、私たち日本人にとって身近なもの。様々な宗派で使われる「般若心経」はもちろんですが、お盆や法事といった年中行事でもお経を聞く機会は多いことでしょう。そんなお経の最強レベルの力を持った読み方があるのをご存じでしょうか?

お経の種類は数え切れないほど沢山あり、それぞれの宗派によって重要視しているものは違いますが、有名な『西遊記』のモチーフとなった玄奘三蔵が持ち帰った『大般若波羅蜜多経(だいはんにゃはらみったきょう)』は、そのスケールの大きさから多くの宗派で重要視されているもののひとつです。

こちらは、なんと全600巻にも及ぶという非常に膨大なもの。600巻というと、並べるだけでも一苦労するほどの量ですが、そこには文字通り「般若思想」と呼ばれるものが記述されています。すべて、釈迦が説いた法だとされていますが、原典であるサンスクリット版が発見されていないことから、様々な文献を玄奘三蔵が翻訳時に統合して創り上げたのではないかという説もあります。

また、名称からもわかるように、有名な『般若心経』は、この『大般若波羅蜜多経』のエッセンスを凝縮したものだともいわれています。しかしながら、こちらも異説があり、はっきりとしたことはわかっていません。

成立がとても古いだけあって、さまざまな異説があるのは当然ですが、確かなことは『大般若波羅蜜多経』は古くから国家や民衆を守ってくれる強い力があるとされてきたことです。そのために、日本に伝わってからも、天皇が命じてこちらの教典を大々的に読むという法会が度々行われています。

しかしながら、全600巻、文字数にすると約500万文字以上になるこの教典をすべて読むというのは大変な時間がかかります。一文字読むのにかかる時間が0.5秒だったとしても、だいたい一ヶ月ひたすら読み続ける必要があるのです。仏教では荒行が多くありますが、さすがに飲まず食わずで読み続けるのは現実的ではありませんので、ある程度休憩を取りながら何ヶ月もかけて読んだという記録は残っていますが、いかな昔といえども、あまりにも気の長い話なので、もっと時間のかからない方法が考え出されました。

その方法というのが「転読」。声に出して経典を読むのではなく、目で経典の文字を追いながら空中でめくっていくというもの。このとき、めくるのにあわせて教典の最初の部分を読経したり、宗派によっては真言を唱え続けたりすることもあります。

実際に読んでいるわけではないのですが、経典をめくるときにおこる風にすら御利益が宿っているとされ、前述したように国家にまつわる願望を達成たり、他の行でどうしても叶わないような願いを成就させるために使われているのです。

言葉だけの説明だとわかりにくいと思いますので、実際に奈良の興福寺で行われた転読の模様をご覧下さい。

なんだか、ダイナミックで見ているだけで楽しくなりますが、非常に強い力を持つ経典を用いて、短時間でその力を引き出すための儀式だと考えると、なかなか興味深い手法といえるでしょう。