神様になった盗賊

日本では法律的には悪とされながらも、多くの人気を集める存在がいます。テレビアニメでお馴染みの「ルパン三世」をはじめとして、かつては「石川五右衛門」や「鼠小僧次郎吉」などもいました。しかしながら、そんな盗賊でありながら、神にまでなった人物がいるのをご存じでしょうか?

その人物とは「高坂甚内(こうさかじんない)」。東京都台東区浅草橋にある「甚内神社」で「甚内霊神」として祀られています。

高坂甚内は江戸市中を荒らし回る大盗賊として名前をあげました。ライバルであった風魔小太郎を幕府に密告したことで、裏の世界を牛耳ったといわれています。風魔小太郎は盗賊という面もありましたが、北条家に仕えた忍者としての知名度の方が高いでしょう。

風魔小太郎というのは、個人の名前ではなく、風魔一族の頭領が代々受け継ぐ称号のようなものです。そのために、史実として最も知られている風魔小太郎は5代目だといわれています。ちなみに、高坂甚内によって幕府に捕縛されたのは、最後の風魔小太郎だという説もあります。

そんな忍者集団の頭領だった風魔小太郎のライバルであり、まんまと罠にかけた高坂甚内も忍者だったといわれています。その出自ははっきりとしないものの、武田信玄で有名な武田家に使えた忍者軍団の頭目だったという説があります。武田家滅亡のあとに、再興を願って軍資金を稼ぐために盗賊になったというのです。

このようなことを考えると、武田忍軍と風魔忍軍の対決が江戸時代の闇で行われていたわけですので、ルパン三世も顔負けのドラマチックな展開だったといえるでしょう。そんな戦いを制した高坂甚内ですが、マラリアにかかって動けない状態だったところを狙われて捕まり処刑されてしまいます。

処刑されたときに、「もしマラリアにかかっていなかったら捕まえられることもなかっただろう。自分の魂魄をこの世に残し、マラリアに悩む者が祈願すれば平癒させよう」という言葉を残しました。この言葉を聞いた人々が祠を作って祀ったのが、前述の甚内神社というわけです。

現在では日本でマラリアにかかる人はほとんどいませんが、病気一般にも御利益があるとして、その治癒を祈る人々が、高坂甚内の命日である8月12日に、甚内神社を訪れています。盗賊でありながら、癒しの神様となった高坂甚内のエネルギーを感じたいという方は、8月に甚内神社を訪れてみてはいかがでしょう?