顔の中から顔があらわれた不思議な僧侶

4月8日から、大阪市立美術館にて開催されている「木×仏像」において、ちょっと異様な姿をした仏像が展示されます。こちらの仏像は、その形からは想像しにくいのですが、実在の僧侶をモデルにしたものなのです。

その僧侶の名前は「宝誌(ほうし)」。今から1500年ほど前の中国で活躍した人物。人前に出るようになったのは5、60才頃ではないかといわれています。僧侶にもかかわらず、髪の毛を伸ばし、街中をさまよい歩いていたとされていますが、晩年になってから不思議な能力が発現しました。

食事をしなくても飢えた様子が見られなかったり、また予言を行ったり、同時期に別々の場所に出現するという分身も行ったともいわれています。このように、かなりパワフルな逸話をもっているのですが、様々な書物に名前が残っていることから実在の人物であったことは確かなようです。

様々な霊異を発現したこともあり、死後にはさまざまな伝説がうまれ、いつしか「十一面観音」の化身であるという信仰すら成立しました。この信仰は日本に伝わり『宇治拾遺物語』に記載されました。

その記載を基に作られたのが、冒頭で紹介した仏像なのです。いったい、どんな姿をしているのか? 下記の動画の30秒過ぎからをご覧になってみて下さい。

顔がぱっくりとわれて、その中からもう一つの顔が出てきているのがわかると思います。ちょっと見には、仏像と言うよりもホラー映画に登場するバケモノのような造形といえるかもしれません。

この像の基になったのは前述したように、『宇治拾遺物語』に、「中国の皇帝が宝誌の姿を絵師に描かせようとしたところ、自分の真影を描くようにといって、自らの顔を左右に広げたところ、中から輝く菩薩の顔が出てきた」という記述からきています。ちなみに、3人の絵師がその姿をみたのですが、それぞれ十一面観音にみえたり、聖観音にみえたりと、菩薩ような姿だったことはわかっても、その正体は謎になっているようです。

謎に満ちた宝誌。実在の人物でありながらも、多くの逸話を残すこの僧侶は、本当に人間だったのでしょうか? 興味がある方は、6月4日までは大阪市立美術館にて展示されていますので、足を運んでみるといいかもしれません。