いよいよ、近赤外線によるがん治療が現実のものになる

以前、COCORiLAで、「身近にある見えない癒しの光」として赤外線が持つ力を紹介したことがありましたが、いよいよ、その力が癌を打ち倒す日が到来しそうです。

前述した2011年の記事で、アメリカの国立衛生研究所チームが、近赤外線を使うことで正常な細胞を傷つけずに、がん細胞だけを破壊する治療法が発表されたということを紹介しました。

こちらの研究は、2012年にはオバマ大統領が一般教書演説で取り上げ「アメリカの偉大な研究成果」として発表するなど、注目を集めましたが、それから4年以上たった今まで研究は着実に進んでいました。

医学界では、さまざまな新しい治療方法が発見されていますが、それらが有効な治療法として認められて実際に人体に使われるようになるまでは、多くのハードルが存在しています。治療法というのは、まさに生死に関わる内容ですので、その厳しさも当然ですが、画期的といわれて注目された治療法でも、こういった実用化の承認をなかなか得ることが出来ずに消えてしまうものが多いのです。

今回の近赤外線による癌治療は、アメリカ食品医薬品局(FDA)から2015年4月に臨床試験の認可を受け、現在ではフェーズ2という段階に入っています。フェーズ1は治療法の毒性を調べるというもので、こちらは無事終了しており、フェーズ2は実際に治療効果を確かめるという段階なのです。30人から40人程度の患者さんを対象に実際に治療効果を確かめており、もしも、こちらで顕著な効果が出せれば、あと2~3年で実用化も可能ということです。

ちなみに、この治療法は、以前も紹介したように、がん細胞だけに結合する抗体を利用します。抗体に近赤外線だけに反応する物質をつけることで、近赤外線照射によってがん細胞だけを選択的に破壊することができるのです。このときに、抗体に付与されるものはIR700という物質であり、名前からもわかるように700ナノメートルの近赤外線を吸収する性質をもっています。

このことによって、がん細胞の膜にある抗体が結合したたんぱく質を変性させ、細胞膜の機能を失わせることが可能となります。これは、2分程度という極めて短時間で行われるために、がん細胞以外に全く影響を与えないという利点があるのです。

また、がん細胞をピンポイントに狙うことができますので、負担が非常に少ないことも特徴です。負担が少ないために、この治療法は何度も繰り返し行うことが可能となっており、がんの8~9割はこの治療法でカバーすることが可能だと考えられています。初期段階の治療はもちろんですが、がんの大きさが大きくなったもの、また手術で取り切れなかったがんへも対処可能など、その応用方法も多彩となっています。

さらに、2015年に特許申請され、今年論文として発表された手法として、がん細胞を直接壊すのではなく、がん細胞の近くにある免疫細胞ががん細胞を攻撃することを邪魔している「制御性T細胞」というものを攻撃することで、自らの免疫力でがんを倒す力をアップさせるという方法も開発されています。こちらは、転移してしまったがんへの効果が高いことがわかっているのだそうです。

この手法は今までのがん治療に比べると、副作用や負担が非常に少なく、効果的であるというだけでなく、費用も安価で行えることから実用化が待ち望まれるものですが、2011年に紹介したものが、いよいよ治験を迎え、うまくいけば発表から10年を立たずに実用化されそうになっています。この治療法が確立することで、日本人の死因のトップであるがんがついに不治の病ではなくなる日も近いかもしれません。