謎に満ちた関東地方を開拓した神

関東地方を開拓し、文化を産み出したという偉業を果たしながらも、その名前はほとんど知られていないという神様が存在しています。

その神様とは「寒川大明神」。一説によると「寒川比古命(さむかわひこのみこと)と寒川比女命(さむかわひめのみこと)」の二柱であるともいわれています。

現在は、関東地方に首都である東京があることから、名実ともに日本の中心部ですが、長い歴史があるのは関西地方であり、関東は長い間、朝廷に従わない人々が住む場所であり、僻地であったのです。

そんな関東地方を人が住めるように開発し、衣食住を整えるために指導したとされているのが寒川大明神。古代には「寒河神」とも呼ばれていたようですが、古事記の神々は九州地方や関西地方をベースに開拓していたと考えられていますので、そういった神々とはちょっと趣を異にする存在といえるでしょう。

関東地方を開拓したといっても、祀られている場所から考えると「相模国」。現在でいうところの、神奈川県周辺を担当していたようです。相模国自体は『古事記』にも登場することから、その時代にすでに文化が存在していたわけですが、それを指導した寒川大明神に関する記載は『古事記』『日本書紀』のどちらにも存在していません。

これらの書物が朝廷によって編纂されたものであることを考えると、当時の朝廷にとって寒川大明神は記録に残すのが都合の悪い神様だったのかもしれません。その一方で、寒川比古命は月読命の息子、寒川比女命は素戔嗚尊の娘であるという説もあります。朝廷の祖先神である天照大神の兄弟である二柱の子孫ということは、もしかしたら、朝廷から追放されたかつての権力者の子孫だったということも考えられます。

そんな多くの謎に満ちた寒川大明神が祀られている神社はほとんどなく、八方除けで有名な神奈川県の「寒川神社」をはじめとして、数えるほどしかありませんが、関東地方には確かに存在していますので、この神様の謎を解きたいという方は、これらの神社を訪れて、そのエネルギーを感じてみてはいかがでしょう?