恐怖の泉へと変わった癒しの泉

癒しの泉といえば、フランスにある「ルルド」が有名ですが、世界的に探すと、癒しをもたらす泉というのは、日本も含めて各地にあります。イギリスにもそんな泉があったのですが、そこはいつしか不気味な恐怖の泉へと変わってしまいました。

その泉は「ナレスボロの泉」と呼ばれています。この泉は滝の下に存在しており、この水を浴びると病気が治るといわれていました。しかし、15世紀に入ってから、この泉の名声は落ち始めます。

その理由のひとつが「マザー・シップトン」という女性。彼女は未来予知の力を持っており、人々の病を治す薬を売っていたことから、魔女といわれていました。また、母親が売春婦であり、父親がわからなかったこと、そして、とても醜い容貌をしていたことから、悪魔の子供として忌み嫌われてもいたのです。

そんな彼女の名前がつけられたのが「マザーシップトンの洞窟」。こちらは、前述のナレスボロの泉のすぐ側にあったために、泉もマザーシップトンと関係しているのではないかと思われたのです。そして、この泉がもつ特性がさらにその噂に拍車をかけました。それはこの「泉の水に触れた物が石になる」というもの。

触れた物を石にするというのは、いかにも魔女の呪いのようですが、この現象は実際に発生しています。なぜならば、滝となって流れ落ちてくる水には、高濃度のミネラルが含まれているためです。ミネラルというと身体に良いイメージがありますが、こちらの水には石灰などが高濃度で含まれているために、この水に数ヶ月ものを触れさせておくと、表面に石灰岩が形成され、鍾乳石のようになってしまうのです。あまりの高濃度のために、飲むことは科学的には推奨されません。

現代の科学では、その原理が解き明かされていますが、鍾乳石などが出来るのに比べて格段に早く、物が石化するというのは、中世の人にとっては呪いにしか見えなかったことから、ナレスボロの石化井戸として恐れられるようになったのです。

ちなみに現在ではテディベアや帽子、人形などが吊されており、なかなか異様な風景となっていますが、これはオカルティックな意味合いがあるわけではなく、石化したテディベアなどが記念品としてお土産屋で販売されるために吊されているのです。このことからもわかるように、現在は、イギリスでも人気の観光地となっており、イギリス最古の観光スポットのひとつに数えられるほどです。

癒しの泉から、恐怖の泉、そして人気観光地となった「ナレスボロの泉」が果たして、どんなところなのか、最後に動画をご覧になって下さい。

いかがだったでしょう? 気持ちのいい滝の音や、鳥の鳴き声からはパワースポットのようなイメージすら感じますが、様々なものが吊されている光景は異様であり、なかなか他では見ることの出来ない貴重なスポットといえますので、イギリスを訪れる機会がある方は足を運んでみてはいかがでしょう?