「お払い箱」という言葉は、あまりいいイメージがあることばではありません。会社をクビにされることを意味したり、不要になったモノをあっさりすてるときに使われたりします。しかし、元々はスピリチュアルなものだったというのをご存じでしょうか?

現在では存在していないのですが、江戸時代頃まで「御師(おし)」と呼ばれる人たちがいました。彼らは神社やお寺のツアーガイドともいえる仕事をしており、参拝者の案内や宿泊の世話などをしていたのです。

大きな神社仏閣や、霊山などにはたいてい御師がいたわけですが、中でも伊勢神宮の御師は特別で、他のものと区別して「おんし」と呼ばれていました。当初は宿の世話や案内をするだけだった御師ですが、いつしか、日本全国へと営業に出かけていき、参詣者を確保する活動をはじめるようになったのです。

そんな伊勢の御師が、自分の受け持ちである参拝者に、お札や、祓い串を入れた箱を配っていました。これは現在でいうと旅行へこさせるための広告やサービスアイテム的なものですが、この箱こそが、本来の「お祓い箱」。

現在でもそうですが、神社で授与されるお札は、基本的に1年で神社に戻しておたきあげをすることになっているので、毎年箱が交換されることになるわけです。そこで、お祓いとお払いをかけて、不要なものを捨てることをお払い箱というようになったわけです。

元々は不要なものを捨てるという意味だったのが、いつのまにか解雇というよりネガティブな要素を含むようになってしまった「お払い箱」ですが、本来は神聖なお札や、串が入っていたとても大切なもので、当時の人たちは非常に大事に扱っていたのだそうです。

以前に、箱の中にはスピリチュアルなものでも、ネガティブなものが入っているパターンが多いという話を紹介しましたが、お祓い箱のように、神聖なものが入っていたにもかかわらず、後世で言葉自体がネガティブな意味合いになってしまうということは、やはり、中身が見えない箱というものは、どこか不安をかきたてるものなのかもしれません。