勝利と栄光の樹

勝利と栄光の象徴であり、なおかつ古代から神聖視されているという樹木を本日は紹介したいと思います。とはいえ、そんなに特別なものではなく、その葉は日常生活でよく活用されているものなのです。

その樹木とは「月桂樹(げっけいじゅ)」。月桂樹の葉にはシネオールと呼ばれる芳香成分が含まれていることから、香辛料として活用されています。シチューやカレーなどに欠かせない「ローリエ」は月桂樹の葉なのです。

ちなみにローリエは香辛料としてだけではなく、消臭効果で肉の臭みを消してくれたり、消化を助ける力や、肝臓や腎臓の働きを活発にする作用もあるのだそうです。料理に使われることが多いローリエですが、ハーブティや入浴剤としても活用されており、その場合は神経を鎮静させ、神経痛や関節の痛みを緩和させたり、発毛促進などにも役に立つといわれています。

月桂樹という名前から、月と関係があるように思えるかもしれませんが、これはあくまで和名であり、本来は月とは正反対の、光と太陽の神である「アポロン」と深い関わりを持っているのです。

アポロンとはギリシャ神話の登場する中でも主要な存在であり、予言と医術、弓矢などを司り、さらにはとても美しい青年だったと言われています。ギリシャ神話の神々は恋多き存在が多いのですが、アポロンもその例に漏れず、さまざまな逸話を残しています。その中のひとつに「ダフネ」という娘との恋物語があります。

あるとき、弓矢の神でもあるアポロンが、恋の神である「エロス」の持っていた弓矢を馬鹿にしました。このエロスというのは、いわゆるキューピッドの原形となった存在です。

馬鹿にされたエロスは恋を芽生えさせる矢でアポロンの胸を射貫き、反対に恋をはねのける矢でダフネの胸を射抜いたのです。これによって、アポロンはダフネに恋をし、ダフネはアポロンからひたすら逃げるということになってしまいました。お互いに魔力によって支配されているので、全く進展はなく最終的にダフネは父親の力を借りて、一本の樹木となることでアポロンから永遠に逃げる事になりました。

樹木となってしまったダフネを見て、落ち込んだアポロンが「せめて自分の聖樹となって欲しい」と頼んだところ、ダフネが枝を揺らしてその葉をアポロンの頭に落としてくれたのです。すでにおわかりかと思いますが、ダフネが姿を変えた樹こそが月桂樹なのです。

この故事をもとに、月桂樹はアポロンの聖樹とされ、さらに月桂樹の葉を冠にしたものが勝利者や、優秀な人たちへと与えられるようになったと言われています。

このように太陽神とゆかりの深いものが、和名では月桂樹という月に関係する名前になったのかというと、その葉がいい匂いをしていることから、月に生えていると考えられた「桂の樹」と同一視し命名されたようです。

ちょっと悲しい伝説を持ちながらも、勝利と栄光を象徴し、太陽神の聖樹でありながら、和名では月の名を持つという、強い二面性を感じさせる月桂樹ですが、花言葉にもその性質は表れています。月桂樹の花言葉は「勝利・名誉」なのですが、月桂樹の花単体の花言葉は「裏切り」なのだそうです。

パワフルなだけでなく、ミステリアスな側面も併せ持つ月桂樹。これからは香辛料や臭み消しなどとして使うだけでなく、古代から伝わるその力にも注目してみると、より料理がスピリチュアルでパワーに溢れた物になるかも知れませんよ。