日本各地に神社がありますが、その中には元々の祭神が忘れ去られてしまっているところも多くあります。今回紹介するのもそんな神社のひとつ。

奈良県にある龍田というと、生駒(いこま)郡にある「龍田大社(たつたたいしゃ)」が有名です。こちらは、風の神様として古くから信仰を集めている神社であり、風神である天御柱命(あめのみはしらのみこと)と国御柱命(くにのみはしらのみこと)を祀(まつ)っています。

天御柱命というのは馴染みが無い神様のように思えるかも知れませんが、龍田大社の祝詞(のりと)によると、こちらは伊弉諾尊(いざなぎのみこと)と伊弉冉尊(いざなみのみこと)の間に生まれた風の神である志那都比古神(しなつひこのかみ)と同一の存在のようです。

神道には水や土地、作物に関する神様は多くいるのですが、火や風の神様は比較的少なく、とくに風の神様はレアな存在です。風は農業には欠かせない反面、台風などが来ることで作物が大ダメージを受けることもありますので、風の神様は各地で深く信仰されていたようです。

さて、今回紹介する神社は「龍田神社(たつたじんじゃ)」。なぜ、有名な龍田大社ではないのかというと、この神社にはおもしろい特徴があるからなのです。

龍田神社は、龍田大社と同じ奈良県生駒郡にあります。この神社は聖徳太子が法隆寺の建設地を探し求めていたときに、老人に化身した龍田大明神に出会い、法隆寺の場所を指示され、さらには守護も約束してくれたために、鎮守(ちんじゅ)の社(やしろ)として創建されたというものです。

龍田明神ということは、龍田大社の神様であり、本来ならば天御柱命=志那都比古神を祀るはずですが、面白いことに龍田神社では龍田比古神(たつたひこのかみ)、龍田比女神(たつたひめのかみ)という二柱を祀っていました。この神様の情報はほとんど無く、果たして風の神様なのかどうかということもわかりません。その後、龍田大社から天御柱命と国御柱命が勧請され、こちらが主祭神となり、名前通り龍田大社系列の神社となっています。

神社自体は小さいながらも綺麗に手入れされており、素朴な感じで境内も気持ちが良いのですが、その場の特色というようなエネルギーがあまり感じられません。神域ではあるのですが、何か物足りない、そんな感じがするのです。

その理由こそが、先ほど紹介した主祭神の交代なのではないかと筆者は思っています。名前は龍田でも本来は、龍田比古神は風神である天御柱命とは違う存在だったのではないでしょうか?

残念ながら、龍田神社を訪れた時にはこういった基礎知識が無かったので、「気持ちは良いけれど、パッとしない場所」というイメージを受けて、深くはエネルギーを感じようとしなかったのですが、もし、より深く感じるようにしていたら、すでに忘れられてしまった龍田比古神のエネルギーも感じられたのかもしれません。

次に奈良を訪れた時には、龍田神社を訪れて、龍田比古神のエネルギーを感じてその正体を探ってみたいと思います。みなさんも、神社などを訪れるときは前もって、その神社について調べておくといいでしょう。「パッとしないなぁ」と思った場所が、実はとても興味深い神社だと後からわかる、という筆者のような体験をしないで済みますよ。

Spot Data
龍田神社
奈良県生駒郡斑鳩町龍田 1-5-6