道から来るモノ

明日、8月10日は「道の日」。いろいろと問題のある国土交通省が昭和61年に道=道路の重要性について関心を持ってもらうために制定したのだそうです。

なぜ8月10日が「道の日」になったのかというと、日本で最初の近代的道路整備計画がスタートしたのが 1920年8月10日だったからなのです。この当時、道路整備計画は流通を良くし、日本を近代化していく上で必要だったと思いますが、近年では無駄な道路建設などが話題になっており、道路を造るというとあまりいいイメージを持たれなくなっているように思います。

しかし、どんな時代でも道が人々にとって重要な意味を持っていたのは間違いありません。日本の村では、古来から村と村の境にある道に道祖神(どうそじん)を祀(まつ)ったり、注連縄(しめなわ)を張ったりする「道切り」という行事が行われていました。

「道切り」とは、村に悪霊や悪いモノが入ってこれないように、村の境に結界を張って、村に入れなくするというもので、道祖神や注連縄だけでなく、地方によっては蛇やムカデをかたどった藁細工を置くなど、さまざまな手法があったようです。

道路が縦横無尽に走るようになった現在では、すでに道切りの風習は廃れてしまっておりほとんど見られることはなくなってしまっていますが、現在でも千葉県船橋市では「中野木の辻切り」という、藁で作った大蛇を木にかける行事が残っています。また、同じく千葉の木更津市や鴨川市などでは古い時代の道切りが再現されていますので、そちらを尋ねることで、道切りがどんなものかという雰囲気だけは見ることはできると思います。

一方、道祖神は現在でもひっそりと、道の傍らに存在しています。これは主に石碑や石像の形で祀られているもので、魔を退けるとともに、子孫繁栄や交通安全の神として信仰されているのです。全国的に道祖神は存在していますが、特に関東甲信越地方に多く、道路の傍らにお地蔵さんではない、石や石碑があったらそれは道祖神の確率が高いでしょう。

魔や霊というと、自由気ままに移動するようなイメージがありますが、彼らにもルールがあるようで、一般的に悪霊は直線を好むと言われています。これは日本だけでなく、西洋でも同じで、イギリスに現れるブラックドッグという犬の魔物は、カーブを曲がれないと言われています。

この信仰が現在でも色濃く残っているのが沖縄。沖縄を旅したことのある方なら「石敢當(いしがんどう)」という文字を一度は目にしたことがあるのではないでしょうか? 道ばたに、まるで表札のように貼り付けられているもので、沖縄全体では1万以上の石敢當があるのではないかと言われています。

これは、直進して来た魔を家に入れないためのもので、T字路や三叉路に石敢當をおくことで、魔除けにしているわけです。魔物が石敢當にあたると砕け散るといわれているので、かなり強力な力を持っていると言えるでしょう。

石敢當は中国から伝来したもので、伝説の武将の名前であるとか、力士の名前であるとかその成り立ちには諸説あるようですが、はっきりしたことはわかっていません。ただ、中国でも魔物を駆逐する強い神として信仰されていることは変わっていないようです。

風水的な観点からみると、直線は良くも悪くもエネルギーを流すルートだとされており、家を直線の終点に建てることは良くないと言われています。そのため、古代の中国では家を建てるために、道を曲げたりもしていたようですが、現在では個人が道路を勝手に造り替えるわけにもいかないので、石敢當を置いたり、気をはじき返す遮蔽物を置いたりして対応することが多いようです。

1920年8月10日に始まった道路整備計画から 90年経った現在、日本全国の主要道路は舗装され、多くの車が行き交うようになっています。その一方で道切りや道祖神、石敢當などの風習はどんどん減ってきているのも事実です。そんな現在の道路には、もしかしたら車よりも多くの、悪いモノが我が物顔で走り回っているのかもしれません。