髪には神が宿る

身近にあるのにスピリチュアルな意味合いでは意外と注目されていない「髪の毛」。実はとってもスピリチュアルなものなのです。

「髪の毛に霊力が宿る」という思想は世界各地で見られますが、有名なものとしては世界で最も発行されている書物である聖書に記載されている「サムソン」の物語が挙げられるでしょう。

旧約聖書の士師記(ししき)に記載されているサムソンの物語はなかなか壮絶です。神に捧げられた存在として生まれたサムソンには、生まれた瞬間から3つの制約が科せられていました。(1)葡萄酒などの強い飲み物を飲まないこと (2)汚れたものを一切食べないこと (3)頭にかみそりを当てないこと=髪の毛を切らないこと。この3つの制約を守って育てられたサムソンは成長後、敵対するペリシテ人との戦いで大活躍することになります。

ライオンを素手で引き裂いたり、300匹のジャッカルの尾を結ぶなどは序の口で、ロバのあごの骨を武器として、一人でペリシテ人 1,000人を倒してしまうほどの強さを発揮します。まさに無敵の強さを発揮したサムソンですが、デリラという女性に心を寄せ、彼女に自分の秘密を教えてしまいます。それによって、髪の毛を剃られたサムソンは力を失ってペリシテ人に捕らえられてしまうのです。

最終的にはある程度髪の毛が生えた段階で、最後の力を振り絞り、自分が繋がれていた建物を倒壊させ 1,000人以上のペリシテ人を道連れに壮絶な最期を遂げることになります。なんだかハリウッド映画のようなダイナミックさと死者の量に、本当に聖書なの? と思う人もいるかもしれませんが、イエス・キリストが活躍する新約聖書に比べて、旧約聖書はダイナミックで残酷な表現も多く出てくるのです。

物語自体がダイナミックなことから、このサムソンの物語はかなり有名ですが、他にも古代エジプトでは「外国に長期滞在する際は、見知らぬ悪霊から身を守るために髪を伸ばしたままにする」という習慣があったそうですし、中世ヨーロッパでは、夫に死なれた妻が自分の髪を切り、自分の身代わりとして棺に入れたりもしていたそうです。

もちろん、日本でも「髪の毛には神が宿る」という考え方はあります。特に女性の髪には霊力が宿るとされており、美しい黒髪を持つ女性が高位の王や貴族に見初(みそ)められるという話は単に外見的な美しさだけでなく、髪に宿った霊力が高位の存在を招き寄せると考えられていたようです。

また、髪の毛は長期保存が可能なことから、歴史上の著名な女性の遺髪というのは現在まで多く残されており、奈良の興福寺の光明皇后をはじめとして、静御前、中将姫、北条政子などの遺髪が寺院や神社に奉納され残っているのだそうです。

どうしてこれだけ髪の毛が特別なものとされたのか? 一説によると上=天にある存在である太陽のエネルギーは、太陽から発する光の筋によって地上に送り届けられるので、古代の人はそれを太陽の髪の毛と考えていたのだそうです。その太陽の髪の毛が一番最初に届き、吸収する場所が人間の中で一番上にある髪の毛だったことから、太陽から来る力を宿す場所だと考えられたというわけです。

こうした髪の毛に対する信仰は古代のものだけではありません。西暦1880年に東本願寺の本堂などを再建するため、資材である巨木を動かそうとしたのですが、当時の技術ではそれを動かすことはできませんでした。そこで、女性の髪の毛には霊力が宿るという伝説をもとに、女性の髪の毛で綱を作って巨木を引っ張ったところ、見事に巨木が動いたという逸話が残っているのです。それだけではなく、実際にその時の綱は現存し、今でも奉納されているのだそうです。

今ではファッション的な意味合いばかりが重要視され、日本人が本来持つ黒髪を染める人も多くなってきました。しかし、高位の存在を招き寄せていたのはあくまでも黒髪ですので、婚活などを考えている人は流行のヘアスタイルにするよりも、発想を転換して古来からの霊力に賭けてみることで、素敵な人を招くことができるかもしれませんよ?