ユーモラスな蛙が登場する行事

本日は7月7日、といえば七夕が真っ先に思い浮かぶところですが、奈良県にある修験道の根本道場、金峯山寺では一風変わったユーモラスな行事が開催されています。

その行事とは「蛙飛び行事」。へそ曲がりの男が蛙に変化させられてしまったことが由来の行事なのですが、人が蛙に変化させられるというと有名なグリム童話『かえるの王様』を彷彿(ほうふつ)とさせるものがあります。

『かえるの王様』はある国の王女が泉に金の鞠(まり)を落としてしまい、そこに現れた蛙が「自分を友達にしてくれるなら鞠を拾ってきてあげよう」と申し出て、王女はその条件を飲むのですが、実際には約束を破ってしまいます。グリム童話だと、このあと蛙が自力で王女に約束を守らせ、強引に友達になった上で、王女の怒りを買い、壁に叩きつけられることで魔法が解けて人間に戻ります。

しかし、原作よりも王女が蛙にキスすることで魔法が解けるという物語の方がポピュラーかもしれません。ちなみに 2010年3月に日本でも公開された『プリンセスと魔法のキス』というディズニー映画はグリム童話を原作にしながらも、キスによって両者が蛙に変化してしまうなどのアレンジが加えられています。

この物語も最終的にはハッピーエンドになることから、アメリカではこの映画を見た 10歳以下の少女達が本物の蛙にキスをして、サルモネラ菌に感染するなどという事件も起こったようです。蛙の皮膚には寄生虫などが多く生息しており、世界一の猛毒をもつ「モウドクフキヤガエル」のように人間の命を一瞬で奪うほどの毒があるわけではありませんが、不衛生であり危険が多いことは確かです。

さて、蛙の話はこれぐらいにして蛙飛び行事に話を戻しましょう。こちらは、修験道の本尊である蔵王権現の悪口を言って、さらに山伏の法力を馬鹿にしていた男が蛙に変化させられます。とはいえ、罰として蛙に変化させられるわけではないのが面白いところです。

男が蔵王権現の悪口を言っていると、どこからともなく大鷲が現れて断崖絶壁の岩の上に置き去りにされてしまいます。困った男は馬鹿にしていたはずの山伏に泣きつきます。すると山伏は男の姿を蛙に変化させて岩の上から助けてあげるのです。

ここで蛙に変化させた理由は語られていないのですが、おそらく小さいものにしたほうが手軽に救出できるからという考えからであって、嫌がらせでしたわけではないと思います。とはいうものの、無事に救出された後に、その山伏の力では蛙から人間に戻すことができなかったというあたり、若干悪意を感じなくもありません。

結局、蛙になった男は蔵王権現の前で懺悔(ざんげ)して、高僧によって経文(きょうもん)を唱えてもらうことで人間に戻れたわけですが、蛙飛び行事ではこのストーリーのうち、蛙になってからを再現していきます。

古い時代にはどうやっていたのかわかりませんが、現在ではちょっと気持ち悪いぐらいのリアルな着ぐるみの蛙が登場し、懺悔し経文を唱えてもらいます。

修験道というと、険しい山道をひたすら辿るというストイックなイメージが強いですが、うってかわってユーモラスな蛙の動きを見ることができるこの行事。お近くの方は是非参加してみてください!