日本人にとって特別な作物

日本人にとって特別な作物とは何か? と考えたときにまっさきに思い浮かぶものは「お米」ではないでしょうか?

日本におけるお米=稲作の歴史は古く、縄文時代中期にはすでに行われていたと言われています。さらに、ある一時期には食料としてだけでなく、税金やお給料などの単位としてもお米が使われていたほどです。しかし、意外なことに白米を気軽に食べられるようになったのは 1930年代のことで、それまでは雑穀米が主流だったそうです。

現在でも日本人の主食として広く好まれているお米ですが、神道では特にお米を重要視し、神道のお供え物である神饌(しんせん)の基本は米・塩・水だとされているほど。稲作関連の神様というのが神道には何柱もいることからも、お米が重要視されていたことがわかります。それだけでなく、お米の持つパワーについてのエピソードが古事記や日本書紀にも書かれているほどなのです。

それでは、さっそくそのエピソードを紹介しましょう。天照大神(あまてらすおおみかみ)によって、地上の統治を命じられて天から降りてきた瓊々杵尊(ににぎのみこと)は、天から三種の神器とともに稲穂も持ってきました。

瓊々杵尊が地上に降りたとき、まだ地上は真っ暗でした。そこで天から持ってきた稲穂を籾(もみ)にして四方に投げたところ、天が開けて、日や月の光が地上を照らすようになりました。まさに稲穂が闇を切り裂き光を招いたというわけです。ちなみに、この伝説はパワースポットとしても有名な高千穂の地名の由来にもなっているのだそうです。

タイでは結婚式の時にお米を撒くことで、悪霊を追い払い、災いから新郎新婦を守るという儀式があるそうですし、西洋式の結婚式でも行われるライスシャワーでは食べるのに困らないようにという意味で穀物=お米(地域によって小麦などのこともあるようです)を投げます。中国では餅米は魔除けとして知られていました。

このように、世界各地でお米の持つパワーは認識されていたようですが、その中でも日本神話の、「地上を全て覆うほどの闇を晴らした」というのは別格のように思います。神道で米が神饌とされ、その米を原料とした御神酒が各種儀式に欠かせないのも当然と言えるでしょう。

そろそろ田植えも終わり、日本各地で田んぼに苗が植わっている光景が見られるようになりましたが、単なる風物詩として見過ごすのではなく、元々はものすごいパワーを持ったものなのだということを認識した上で見てみると、また違ったお米の魅力が発見できるかも知れませんね。