頭上からの魔を避ける

本日、6月11日は「傘の日」だそうです。なぜ、この日が選ばれたのかというと、暦のひとつである雑節では本日が「入梅(にゅうばい)」だからなのだそうです。

今年はすでに全国的に梅雨入りしている地方が多いですが、入梅は梅雨入りの時期を知るための目安として考え出された暦です。ご存じの通り、梅雨入りは季節によって違ってきますが、農家によっては梅雨入りを知ることは田植えなどの作業日を決めるためにとても重要だったために、とりあえずの目安として「芒種の後の最初の壬の日を梅雨入り」として入梅が定められたというわけです。ちなみに、現在ではこの定義は古いものとなっていて「太陽が黄経 80度の点を通過する日」が入梅の定義となっています。

そんな梅雨に欠かせないものといえば傘。当然ながらこの記念日を設定したのは傘メーカーの団体で「日本洋傘振興協議会」というところです。洋傘振興となっていますが、実際の所、現在の日本で流通している傘のほとんどが洋傘です。

洋傘と和傘の違いは材質で、ざっくり分けると雨を除けるための部分が紙のものを和傘、化学繊維や絹などのものを洋傘と呼んでいるようです。和傘は紙を使っているために、防水性は優れているのですが、保管に手間がかかり、なおかつ耐久性も低いために洋傘が一般的に使われるようになりました。

傘自体の起源は古く、日本書紀にも登場するそうですが、この時の傘は現在のように柄がついたものではなく、頭に直接かぶるものでした。今のように柄のついた傘が登場したのは遙かに後の時代で、開閉機構が備わったのは鎌倉時代頃だと言われています。

柄のついた傘は、もともとは雨除けではなく、魔除けなどを目的として身分の高い人を守る為に古代中国で開発され、その後仏教の儀式用の道具として日本に伝わったとされています。つまり、もともとは雨ではなく、邪悪なものから身を守る道具だったわけです。

その後、実用性が追求され童謡にも出てくる蛇の目傘(じゃのめがさ)が登場します。傘の中央部と縁に青い紙、その中間に白い紙を張って、開いた傘を上から見ると蛇の目模様に見えるようにしたものですが、この蛇の目にも魔除けの意味合いは含まれています。

日本酒の品質を確かめるために使われる「利き猪口(ちょこ)」というものがあります。これは、お猪口の底に藍色の蛇の目が描かれているもので、日本酒の透明度を見るために必要なものなのですが、実はそれだけではなく、蛇の目の魔除けパワーで日本酒を清める意味もあるのだそうです。

以前に 天から降ってくる魔を避ける という話を紹介しましたが、傘を上から見ると蛇の目になっているというのも、雨とともに天から降ってくるネガティブなものを祓(はら)うためのスピリチュアルな装置だったと考えることもできるでしょう。

扱いが難しいためにほとんど見られなくなってしまった和傘ですが、スピリチュアルな意味でも、芸術的な意味でも洋傘とは違った趣を持っていますので、興味を持った方は一本手に入れてみるのもおもしろいと思います。