うちわで災厄を祓おう

本日5月19日は奈良の唐招提寺(とうしょうだいじ)で「うちわまき」という行事が行われます。文字通り団扇(うちわ)を参拝者に撒くというこの行事、毎年大人気で団扇は取り合いになるほど。

うちわまきが行われる5月19日は唐招提寺中興の祖とされる覚盛上人(かくじょうしょうにん)の命日。なぜ命日に行われるのかというと、覚盛上人の生前に起きた、とあるエピソードが元になっているからなのです。

あるとき、覚盛上人が修行中に蚊に刺されているのを弟子が見て、その蚊を叩きつぶそうとしたところ、上人が「生きとし生けるものはみななんらかの施しで支えられている、蚊に自分の血を与えるのも菩薩行である」と言ったのだそうです。そんな上人が亡くなった後、上人から教育を受けていた尼僧たちが、「せめてこれで蚊を追い払って下さい」という意味を込めて団扇を供えたのが、うちわまきの始まりと言われています。

現在では団扇はハート型のかわいらしいものになっており、1,700本あまりの団扇は全て僧侶が手作りで作っています。この団扇には厄除け、雷除け、火除け、さらには害虫除け、病魔除けなど魔除けの力があるとされており、多くの人が欲しがるので、ほとんどが取り合いでぼろぼろになってしまうのだそうです。

唐招提寺で配られるものでなくとも、もともと団扇とは霊力がこもった品物でした。団扇の起源は古く、古代中国や古代エジプトからすでに存在しており、日本でも古墳時代の祭司用の道具として使われていたとされています。このことからもわかるように、現在のように涼をとるために扇ぐのではなく、儀式や祈願などのために、はらい、かざすために使用されていたのが大元なのです。

祭司儀礼に使われていた団扇ですが、戦国時代には軍を指揮するために、また矢を防ぐ武具としても使われていたと言われており、現在のように涼を取ったり風を送ったりするために、一般的に使われるようになったのは江戸時代のことだと言われています。

扇風機やエアコンの無かった時代には、団扇は涼を取るための道具として活躍していましたが、今では日本の風情を楽しむための道具として細々と生きながらえているというのが実情ではないでしょうか。

しかしながら、今年の夏は全国的に節電が必要とされることから、団扇などの電気を使わずに涼を取れる道具に関心が集まっています。風を送って涼しさを生むのはもちろんですが、はらうことで、文字通り厄を祓(はら)ってくれる団扇は、スピリチュアルでエコロジーな道具として、今後もっと注目されて欲しい品物です。