光へ向かって歩いていく木

歩くことのできる植物があるというのをご存じでしょうか? そんな、まるで絵本や物語の中に出てくるような木が実在するのです。

とはいっても、映画の『ロード・オブ・ザリング』に出てくる「エント」と呼ばれる木の姿をした巨人のように、のっしのっしと歩くわけではありません。非常に長い時間をかけながら移動するのだそうです。

その木の名前は「ウォーキング・パーム」。ヤシ科の植物で、中央アメリカから南米にかけて、広い範囲の熱帯林に生息しています。高さは 20メートルに達するものがあるということですので、この木が動いていく様子を撮影したものを早回しで再生すれば、前述のエントのように見えるかも知れません。

いったいどうやって木が動くのでしょう? ウォーキング・パームには「支柱根」という根がタコ足状に生えていて、これらに支えられることによって幹の部分は地上から離れた場所に持ち上げられているのだそうです。これは、できるだけ太陽に近づくことでエネルギーを得ようとする生存戦略なのだそうです。

ウォーキング・パームは支柱根によって支えられているわけですが、太陽が良く当たる支柱根はどんどん育って大きくなっていきます。逆に太陽の当たらない部分は成長が遅くなるわけです。そうなると、支えの部分が次第に斜めになってきます。本体はこの間もひたすら太陽に向けて成長しているわけですので、最終的には本体を支えられなくなります。

そうなると普通に考えると倒れてしまいそうなものですが、これらのプロセスは非常にゆっくり進むので、バランスが崩れてきて本体が斜めになってきた時点で、今度は本体の先端に近い部分から新しい支柱根を生やして体を支えようとするのです。この新しい支柱根を支えとして、また同じようなプロセスが繰り返されます。

最初にあった支柱根や本体は朽ち果てていき、先端部分の新しい支柱根と本体がどんどん太陽に向かって進んでいく。時間はものすごくかかりますが、確実に太陽に向かって移動しているわけです。これは、ごくごくゆっくりとですが、歩いているといっても問題は無いでしょう。

密林には太陽の光は十分に差し込まないことから、より太陽の光を効率よく浴びることができるように、このような能力を身につけたとされているウォーキング・パーム。不可能だと思えることでも、時間をかけてゆっくりと繰り返すことで、いつかは実現することが可能だということを教えてくれるようにも思います。

光へと向かって諦めずに進み続けるその姿勢は、私たち人間も見習う必要があるのかもしれません。