地震を引き起こすナマズ

未だに余震が続いている昨今ですが、江戸時代には地震は地面の下にいる大鯰(なまず)が起こすものだとされていました。

古代、地震は日本列島の下に横たわる龍が引き起こすものと言われていたようです。龍は地脈やレイラインなどといった地球に流れるエネルギーを表すものとしてよく使われますので、古代の人は日本の下に、地震を引き起こすプレートがいくつもあるのを直感的に知っていたのかも知れません。

もともとは龍だったはずのものが、時代を経るに従って、なぜか大鯰が地震を引き起こすというように変わっていったようです。どうして大鯰が地震を引き起こすと言われるようになったのかは定かではないようですが、一説によるとナマズが地震を感知することができることから、「ナマズの親分である大鯰が地震を起こしているに違いない」と考えられたと言われています。

ナマズが本当に地震を感知できるのかというのは、科学的な研究が行われています。1920年代に青森県で研究された時には8割ほどの確率で地震を感知したとされており、その後 1976年から 1992年にかけて東京都水産試験場で行われた研究によると、3割程度は地震を感知していたようです。

地震感知の確率が3割というのが、高いか低いかというのは何とも言えないところですが、緊急地震速報の確率が東日本大震災以降3割程度だということを考えると、なかなか高い確率なのかもしれません。

なぜナマズが地震を感知できるのかはまだ証明されていないようですが、ナマズは電気に敏感なことから、地震に関係する電気的な変化を感じているのではないか? と言われています。

このようにある程度科学的な裏付けもあるわけですので、江戸時代の人は直感的にナマズが地震を感知することに気が付いていたのでしょう。大鯰がポピュラーになったのは、1855年に起きた安政江戸地震の後だと言われています。

この地震の後に「鯰絵」と呼ばれるものが流行したのだそうです。その絵は地震で被害を受けた庶民が大鯰を殴っている絵柄のもの。地震へのやり場のない怒りを表したわけですが、江戸時代の人がしゃれていたのは、大鯰をかばう人が出てくる絵も描いていたことです。

どうして大鯰をかばうのか? かばっている人たちは、大工さんが中心だったのです。つまり、地震で倒壊した家屋の建て直しで、大工さんたちは商売繁盛していたため、その原因である大鯰をかばったというわけです。江戸っ子は宵越しの銭を持たないという言葉がありますが、景気が良くなった大工さんがぱーっと飲み食いにお金を使うことで、地震後には景気が回復するどころか、好景気になったので、地震から時間が経ってから描かれた鯰絵は一転して大鯰が崇められているというものもあったぐらいです。

このエピソードからは、自粛ばかりに気を取られている現代の私たちよりも、江戸時代の人のほうがよほどスマートでしゃれた感覚を持っていたように感じられます。とはいえ、これ以上大鯰に暴れて欲しくないのは確かですので、一日も早く余震が収まり、大鯰を叩く気分ではなく、崇めることのできるようになる日が一刻も早く訪れて欲しいものです。