湖を汚す妖怪? それとも美しい魂?

本日、3月29日は「マリモの日」です。ということで、今日はマリモについて紹介したいと思います。

なぜ3月29日がマリモの日になったのかというと、1952年に北海道阿寒湖のマリモが特別天然記念物に指定された日が3月29日なのだそうです。日本でマリモが発見されたのは 1897年ということですので、天然記念物に指定されるまでには結構時間がかかったようです。

大抵の人はマリモと聞くと、漢字で「毬藻」と書くことからもわかるように、緑色の丸い球を想像すると思いますが、実は球状になるマリモは北海道の阿寒湖と、青森県の小川原湖だけにしか生息していないのです。マリモ自体は北海道、東北、関西などあちこちに生息しているにもかかわらず球状になるのはたった二箇所だけというのは、なんだか不思議な気がします。

マリモは現在では個体数が減少しており、絶滅危惧種に指定されるほどです。それなのに、なぜお土産で売られているのでしょうか? お土産で売られているものは、糸状のマリモを人工的に丸めたものなのです。しかし、こちらの糸状のマリモも近年では減少してきているようで、現在では海外産のマリモが多くなってきているようです。

最大で 30cm ほどの大きさになるマリモ。今でこそ生態もわかってきていますが、古代の人はその姿を見てどんな生き物か不思議に思っていたことでしょう。アイヌ語ではマリモをトーラサンペ(湖の妖怪)と呼んでいるのも納得できます。

アイヌの伝説によると、阿寒湖の神は、湖に実っているペカンベ(菱の実)が湖を汚すと嫌い、湖からさっさと出て行けと怒りました。ペカンベたちは湖に置いてくださいと頼んだにも関わらず神様が聞き入れてくれなかったので、仕方なく他の湖に引っ越すことになってしまったのです。しかし、引っ越す際に神様への嫌がらせとして湖のほとりの草を取ると、湖に投げ込んで「藻になって湖を汚せ、汚せ」という呪いの言葉を残しました。

この時に投げ込まれた草が呪いによって姿を変えた物がトーラサンペ=マリモというわけです。こういう話を聞くと、あのかわいらしい姿がなんだかちょっと不気味にも思えてきます。こんな風に思ったのは筆者だけではないようで、大正時代に創作された美しいマリモの伝説もありますので、そちらも紹介しましょう。

阿寒湖のほとりにある集落に、酋長の娘であるセトナがいました。美しいセトナの婚約者には副酋長の息子が選ばれたのですが、彼女が好きなのは下男のマニペだったのです。身分違いの恋ということで、密かに密会を重ねていた二人ですが、あるときセトナの婚約者に密会を見つかってしまいました。婚約者とマニペは争いになり、マニペは誤って婚約者を殺してしまいます。

故意では無いものの、人を殺してしまったという罪にさいなまれたマニペは阿寒湖で自らの命を絶ってしまいます。そして、セトナも後を追うように阿寒湖へと身を投げました。悲しい恋の末に命を絶ってしまった二人の美しい魂がマリモになったのだそうです。

呪いの藻とは随分と違って、ロミオとジュリエットのような悲恋の伝説となっています。果たして、みなさんはマリモを見て、どちらをイメージするでしょうか? 北海道を訪れたときはじっくりとマリモを見つめて考えてみるのも面白いかもしれませんよ。