虫たちが目を覚ます日

明日、3月6日は啓蟄(けいちつ)。難しい漢字が並んでいますが簡単に言ってしまうと、春が訪れ、眠っていた虫たちが動き始める時期であることを表します。

啓蟄の「啓」とは「開く」という意味で、蟄は冬の間に地中で眠っている虫のことだそうです。てんとう虫やくわがた、でんでん虫(かたつむり)などは冬眠するということですので、そういった虫が暖かさに惹かれて地上に戻ってくるというわけです。

今までにも、こういった季節の言葉はいろいろと紹介してきましたが、啓蟄も同じように二十四節気の一つです。ただ、啓蟄の珍しいところは、二十四節気で唯一日本と中国で呼び名が違うというところです。

中国や、日本以外の漢字文化圏では啓蟄のことを、驚蟄と書きます。中国でも、もともとは啓蟄を使っていたのですが、漢王朝の皇帝である景帝の諱(いみな)が「啓」だったので、それを使うことを避けて、似たような意味である「驚」を使うようになったのだそうです。

ちなみに「諱」とは本名のこと。古代では身分の高い人の本名を呼ぶことを避けていたのだそうです。このようなことから、中国では本名の他に、通称としての字(あざな)というものが生まれました。本名にパワーがあるというのは、スピリチュアルな観点からも言われており、日本でも古い時代には、高貴な人は本名を隠していたそうです。いろいろと興味深い内容ですので、諱に関しては、また機会を改めて書きたいと思います。

話を啓蟄に戻しましょう。時代が変わったところで、中国でも一時驚蟄から啓蟄に戻ったようなのですが、その時点ですでに驚蟄のほうがポピュラーになっていたために、最終的には驚蟄のほうが使われるようになりました。

1787年に出版された暦の解説書『暦便覧』では啓蟄のことを「陽気地中にうごき、ちぢまる虫、穴をひらき出ればなり」と表現しています。冬の間押さえ込まれていた陽のパワーが地中に広がり、活力を得た虫たちが穴から出てくる、といった感じでしょうか。

まだ寒い日もありますが、確実に季節は春へと向かっていきます。歩いているときなどに、ふと足下の地面を意識してみましょう、その奥底にあふれてきている、春の暖かなエネルギーが感じられるはずです。