帝を守る邪気を祓う鎚

新年には邪気を祓(はら)う行事がいくつもあります。昨日 紹介した小豆がゆに続いて、本日も邪気払い続きになってしまいますが、卯年である今年にふさわしいものですので紹介したいと思います。

本日紹介するのは「卯槌(うづち)」。これは平安時代に「初卯の日」つまり新年が明けて初めての卯の日に、邪気払いとして朝廷に送られた鎚のこと。桃の木を長さ約9センチ、幅約3センチ四方の直方体に切ったもので、縦に穴が空けられており、そこに5色の糸を 1.5メートルほど垂らして室内にかけて邪気を祓ったとされています。

清涼殿(せいりょうでん)という帝(みかど)が日常的に過ごす場所と、昼御座 (ひのおまし)という帝が日中に座っている場所の、それぞれ南西の柱に卯槌が置かれていたそうですので、それだけ強力な力を持つものだと考えられていたのでしょう。帝の身を守ってくれるほどの品物ということもあり、貴族達の間ではお互いに卯槌を送りあう習慣があったとも伝えられています。

卯槌には、さまざまなスピリチュアルな意味合いが込められています。まずは材質ですが基本的に桃の木で作られています。桃がとてもスピリチュアル なものだというのは、以前にも紹介したことがありますが、桃は邪気を祓うことで知られています。さらに5色の糸は木火土金水の5行を表しています。邪気を祓うだけでなく、バランスのとれた5行のパワーを供給するという意味も込められているのでしょう。

卯槌と同じようなもので、卯杖(うづえ)というものもあります。こちらは桃だけでなく、椿や柳の木なども使って作られた飾り物で、同じように邪気を祓うとされています。鎚といい杖といい、飾り物にも関わらずなぜ、そんな名称がついているのか? というと、これらはもともと、地面を打ってそこに眠る精霊を呼び起こす物だったのです。

卯とは五行でいうと「木」であり、木は「物事を生ずる、発展させる」意味があるとされていますので、その日にスピリチュアルな木材で作った鎚や杖で地面を叩くことで、今年1年の豊穣を願い、土地の力を呼び起こし、活性化させたというわけです。

現在では卯槌も卯杖もあまり知られなくなってしまっていますが、東京の亀戸天神では江戸時代から作り始めたという独自の卯槌を、初卯の日に授与してくれます。写真に写っているのが亀戸天神の卯槌。今年の初卯は1月12日だったのですが、あまりこれを目当てに来ている人はいなかったようで、お守りなどの横にひっそりと置かれていました。

今年は卯年。さきほども書いたように、五行でいうと新しい物事が始まり発展する年ですので、しっかりと邪気を祓い邪魔なものを清めて臨みたいものです。