言霊の力

「志貴島のやまとの国は言霊のさきはふ国ぞ福(さき)くありとぞ」。これは万葉集に掲載されている、柿本人麻呂作の和歌。簡単に言ってしまうと、「日本は言霊の力によって幸せがもたらされている国なんだよ」ということになります。今回は、そんな「言霊」について紹介したいと思います。

古代においては、「言」と「事」は同一の概念だったとされています。さきほど挙げた和歌は、わかりやすいように言霊と表記していますが、原文では「事霊」と書かれています。じゃあ、実際は言霊とは違うものじゃないの? と思うかもしれませんが、同じ万葉集に収録された山上憶良の和歌にも「言霊のさきはう国」というフレーズがでてきており、そちらは「言霊」と表記されているのです。このことからも、当時は言と事に区別が無かったことがわかります。

古の人々は自分が発した言葉が、現実の物事に対して影響を与えると信じていたために、言と事が同一視されていたのだと考えられています。現代ではそのような発想は無くなってしまっているように思いますが、現在でも「忌み言葉」という形で、その思想の一部は残っています。

忌み言葉とは、特定の状況では口に出さないほうが良いとされている言葉のこと。例えば結婚式では「別れる」「離れる」「流れる」「壊れる」などという、離婚を連想させる言葉は避けますし、受験生相手には「落ちる」「滑る」「転ぶ」などといった言葉を避けるようにするというのは、結構普通に行われていると思います。

時代が経つにつれて、忌み言葉もだんだんと意識されなくはなってきていますが、スピリチュアルな世界に興味がある人にとっては、言葉の力というのは現在でも重要視されています。『水からの伝言』での「良い言葉を見せる事で美しい結晶ができる」を発端に、さまざまな分野で「美しい言葉は美しいエネルギーを持つ」という発想が広まってきました。

「ありがとう」という言葉に強いパワーがある というのは以前にも紹介しましたが、そういった単語ではなく、単純に1文字の言葉にも意味があるというのをご存じでしょうか?

古神道では「す」という言葉こそが宇宙を創造した天之御中主神を表す、とても力のある言葉だとしていますし、言霊について書かれた『ホツマツタエ』という古文書によると、そもそも日本語の一つひとつは、それぞれが神であるとしています。

このあたりを説明していくと、いろいろな説もあって一冊の本ができるぐらいになってしまいますので、もうちょっと身近な所にすると、言葉によって占いをするという方法もあります。言葉で占うといっても、単語ではなく「あ」「か」など、50音の文字、それぞれに意味があるのです。

占いの手順は、実際にはサイコロのようなものを2つ作って、それを振ることで文字を導き出したりするようですが、簡単な方法としては、瞑想して、頭の中で、何か1文字を思い浮かべてみましょう。例えば「い」という文字が浮かんだとします。「い」は「日の光を受け、万物の多い育つ象」なのだそうです。簡単に言うと、すくすくと成長していくエネルギッシュな状態といった感じでしょうか? このような意味合いが 50音にちゃんとそれぞれ用意されています。

私たちが、普通に使っている日本語ですが、そこには本来、とても強い力が込められているのです。古来の人々は「言挙げ」をするときは、慎重に行っていました。言挙げとは、自分の意志をはっきりと声に出して言うことですが、これが正しいことでなく、悪いことや自分の慢心から発したときは、自分に悪い結果が返ってくるからなのです。

汚い言葉や悪い言葉を、軽々しく使わないのはもちろんですが、何かを強く主張する時にはそれが、エゴや慢心から出ていないか考えてみましょう。それが本当に正しいことであれば、言葉の持つ力を実感した上であなたが「言挙げ」した言葉は、きっと現実へと変わるはずです。