夢を現実にする部族

「現し世は夢、夜の夢こそまこと」とは有名な小説家である江戸川乱歩の残した言葉ですが、世界には、まさにこの通りのことができる人たちがいるようです。

夢というのは大抵の人が眠った時に見るものですが、なかなかそれを活用しようとは思いません。しかし、マレー半島に住むセノイ族やインドのサオラ族、ネイティブアメリカンのいくつかの部族などは、夢を日常生活の一部として取り入れて活用しているというのです。

セノイ族の人々は、夢は現実世界とは別のもう一つの実在する空間だと考えているそうです。彼らは朝起きると、まず最初に自分が見た夢について家族と話し合い、その夢がどんなものなのかを解釈していくことで、現実世界の問題までも解決していくと言われています。

例えば、夢の中で何か恐ろしいものに攻撃された場合、普通ならば目が覚めたら「あぁ、夢で良かった…」となるところを、セノイ族の場合は、その恐ろしい存在にどうやって対処するかを考えるのです。このとき、シャーマンのような存在であるハラクスがどうしたら良いのかという対処方法をアドバイスしてくれます。

文明社会にいる私たちからすると、まるで無意味なことに見えますが、こういったことを行うことによって、現実の脅威を前もって予知して逃れることができるとセノイ族は信じているのです。

夢の解釈だけならば、フロイトやユングなどによって心理学にも導入されていますが、セノイ族を初めとした、夢を重視する部族は、そこを越えて夢をコントロールすることもできます。夢を見たのならば、その中で自分の意志で行動するように心がけることで、いつしかまるで起きているときのように夢の中で行動ができるのだそうです。

そんな馬鹿なこと! と思うかもしれませんが、類似の技法は世界中のさまざまな地域に伝わっています。一例としてチベット密教を取り上げてみましょう。チベット密教の中には「ミラムの法」という、夢をコントロールするための修行が存在しており、これは、夢をチャクラとプラーナ(気のようなもの)を使って、意識的にコントロールしていき、最後には現実の世界と夢の世界を溶け合わせてしまうというものすごい行です。

まるで小説のような話ですが、この技術を会得したというチベット密教の聖者ミラレパは、夢見を使うことで空を飛び、実際にそれを目撃した人の談話まで残っているそうです。

とはいえ、上記のミラレパは 12世紀頃の人なので、それが本当かどうかを確かめる術はありません。しかし、現代でも夢見の技法は生き残っていて、比較的新しいアプローチは明晰夢(めいせきむ)と呼ばれるものです。

こちらは、神秘的なアプローチではなく極めて科学的なアプローチをする西洋で生まれた方法。人間が夢を見ているときは、レム睡眠であることが多いのですが、この状態の時に外部から刺激を与えることで、自分が夢を見ていることを知覚してコントロールするというのです。

外部から刺激を与える方法はさまざまですが、アメリカなどではレム睡眠時の眼球の動きを感知して、光を放つアイマスクなどが販売されています。

奥が深い夢の世界。今回はざっとその不思議さを紹介するだけになってしまいましたが、また機会があったら、より詳しい話なども書いてみたいと思います。