現代社会と老荘思想(6)

「柔らかいものが堅いものに勝つ」

最も柔らかいものが、最も堅いものをも突き動かす。
形のないものが、形のある者の隙間に入り込んでいくのだ。
このような事から、無為の為せる技の有益さを知る。
無為の有益なことは、
大自然の不言の教えであり、
それは天下に及ぶものがない。

(老子道徳経 第四十三章)

また「雨だれ石をも穿つ」という言葉がありますが、水の働きにたとえて同じようなことを言っているのが、次の章です。

「天下には、水ほど柔らかくしなやかなものはない。柔弱だが、堅くて強いものを制する時の水ほど強いものはない。これに代わるものなどなにも無いからだ。
弱いものが強いものに勝ち、柔いものが剛に勝つのは、世の中誰でも知っているのだが、これを実行し得るものはなかなかない。」
(老子道徳経 第七十八章)

「柔らかく弱いものこそ、本当に強いものなのだ」というのが老子の考えの中心にあるようです。

それは、逆に言えば堅くなってしまったもの、強大になってしまったものは、融通が効かなくなり変化に対応しきれなくなるから結局は負けてしまうのだということです。

弱いからむやみに先頭に立って戦おうとしないので、無駄な命を捨てることがない。

柔らかさを知って抵抗しないで流れにまかせるから、うまくかわして最後は自分の目的を果たすのです。

大木は強い風に抵抗して最後にはポキリと折れてしまいますが、柔らかい草花は風に揺れているだけで吹き飛ばされることはありません。

そしてこの考え方は、老子の非戦論にもつながっていきます。

道にしたがって君子を補佐するものは、武力によって天下に強さを示してはならない。
力を使えば必ず他から仕返しされるものだからである。

昔からいわれるように、軍隊の駐屯するところには雑草が生え、大きな軍の後には必ず飢饉があるのだ。
道に通じているものは、きっぱりと決心して勝利を得たらすぐに戦をやめる。
むやみに力を使ったりはしないのである。

やむを得ずに戦うのであって、その強さを鼻にかけたり、自慢するようなことはしない。
勝ったからといって、さらに調子づいて敵に脅しをかけるような真似は絶対にしないのだ。

すべてのことは、あまり盛んになりすぎれば、無理をしてやがて必ず衰えてくるのである。
これは道に従わないということだ。道に従わなければ、すぐに滅びてしまうのだ。
(老子道徳経 第三十章)

「やり過ぎれば無理をしてしまうからやがて衰えてしまう」というのも、老子の考え方の特徴です。
さらには、相手をどんどん勢いづかせてやればいい、自滅するからそれを待っていればいいのだともいいます。
野心はっきり敵であるといい、止まる所を知らない者はやがてダメになるといいます。

逆に言えば、「知足者富」(老子道徳経 第三十三章) 「足るを知る者は富む」と考えるのです。


天下に道が行われていれば、馬は軍馬ではなく、農耕に従事する。
道が行われていない時には、軍馬が郊外で子を生むようになるであろう。

足るということを知らない欲深さより大きな禍いはない。
とどまることを知らないことより、非難されるべきことはない。
野心を肯定することより大きな罪はない。

だから足りるを知るということこそが、いつでも変わらない満足というものである。

(老子道徳経 第四十六章)