空を飛ぶ梅

寒さも和らいできて、春の訪れが待ち遠しい季節になってきました。春というと桜というイメージですが、桜が咲く前に人々の目を楽しませてくれている花があります。

その花とは「梅」。梅の開花時期は1月下旬から4月上旬までで、もっとも早く開花するものは冬のさなかにもその美しい姿を見せてくれます。

現在では日本の花というと前述したように桜のイメージが強いのですが、平安時代以前に花というと梅を指すことの方が多かったようです。平安時代中頃から徐々に桜の方が優勢になり江戸時代あたりに、現在のような花見=桜というかたちになったそうです。

梅=ウメの語源には諸説あるようで、梅には薬効があることから「う(見たこともない)+め(本当に大切な)」でウメという説や「熟実(うみむ)」がなまってウメになったいうもの、中国語で梅を「メイ」というものがなまったという説、「『う』つくしく『め』ずらしい」からウメなどがありますが、これが正解というものはわかっていないようです。

梅には多くの種類があり、大きく分けると果実として栽培される「実梅(みうめ)」といわれるものと、観賞用の「花梅(はなうめ)」になります。それぞれが百種類以上もあり、梅全体の品種をあわせるとなんと 400種類以上にものぼるそうです。

もともと薬木として中国から遣唐使が持ち帰ったものと言われているだけのことはあり、梅の薬効は古くから知られています。中国では烏梅(うばい)と言われる未熟な梅の実を燻製にしたものがあり、これには鎮痛・解毒作用があり煎じて飲むと風邪薬や胃腸薬となり、擦り傷や切り傷の止血にも使われたそうです。この烏梅は現在でも漢方薬として使われています。

日本で梅の薬効を引き出したものというと、みなさんご存じの梅干しがあります。梅干しというとご飯のお供というイメージがあるかもしれませんが、平安時代には医学書に記載されており「薬」として用いられていたのです。

このように古くから人々の目を楽しませ、身体を癒してきた梅ですが、スピリチュアルな逸話も残されています。各地の天満宮に祀られており、学問の神様として有名な天神さんこと菅原道真は梅をこよなく愛したことでも知られています。梅の種の中身を「天神さん」と呼ぶのも、道真との関係からきているのです。

さて、そんな道真ですが、京都から九州に左遷されてしまいます。そのことがもとで怨霊となり、後には神様として祀(まつ)られるようになるのですが、九州に左遷された際に京都の道真邸に植えられていた梅が、一夜にして九州まで飛んでいったという伝説があります。

この梅は「飛梅(とびうめ)」といわれ現在でも九州の太宰府天満宮でその姿を見ることが出来ます。飛梅の本体は太宰府天満宮にありますが、各地の道真を祭神とする神社に伝説のある梅や飛梅を株分けしたものがありますので、お近くに天満宮などがあるかたは見てみるとおもしろいかもしれません。

美しく、薬になるだけでなく、主のために何百キロもの距離を一夜にして飛ぶほどの霊力をも秘めた梅。これからの季節、あちこちで梅を見かけることがあると思いますが、そのときはこういったエピソードを思い出しながら鑑賞してみてください。梅のもつ霊力も感じ取れるはずです。