昔話の癒し

昔話というと、みなさんは何を思い浮かべるでしょうか? 桃太郎や浦島太郎といった日本の話、それともシンデレラや赤ずきんといった西洋の話でしょうか? どちらにしてもそういった昔話や童話を一度も聞いたことのない人はいないはずです。

現在では昔話を知るのは絵本だったり、テレビだったりすることが多くなっていますが、本来は夜、大人から子供へと語られるものだったように思います。

遠野物語で有名な岩手県には、いまでも昔話を語る語り部さんたちが残っています。だいたいがご高齢の方で、きつい東北なまりで昔話を語ってくれるのです。

東北弁は他の地方の人間には非常にわかりにくいのですが、それでも話を聞いているうちに物語の世界にいつしか引き込まれていきます。話自体はそんなに長いものはなく、短いものだと5分程度で終わってしまいますが、話を聞いている間は物語世界に包まれ、とても癒された気分になります。

小さい頃、寝物語として昔話を聞いたことがあるのならば、そのときの感じを思い出してもらうと、それに近いものがあるように思えます。暖かい布団に包まれ、近くには信頼できる大人もいて、確かに守られているけれども、昔話の世界では心躍る冒険やちょっと怖い出来事が起きている。

そんな安心感と高揚感の入り交じったような不思議な感覚。大人になって自分で本を読んだり映画を観たりするのでは味わえない感覚を、語り部はもたらしてくれます。

こういった昔話の効果は心理学の世界でも利用されており、芸術療法のひとつに物語療法や童話療法と呼ばれるセラピーが存在します。

カウンセリングで、有名な昔話や童話をクライアントに語ったり、自分で童話を創ってもらったりすることで、現在の心の状態を認識させ、それによって精神状態を回復していくのです。最近では突然自殺をしてしまうような人にこの童話療法が使われているという話もあります。

有名な心理学者である C.G.ユングもグリム童話に関する本を書いています。童話に出てくるモチーフはユング心理学の元型とつながるものがあり、それだからこそ長い年月にわたって多くの人から支持されているというのです。

この元型という概念はスピリチュアルな世界でもよく使われます。エネルギー的な存在としてその力を借りたりするワークなどもありますし、魔術などをこの概念で説明する人もいるほどです。

調べれば調べるほど深い昔話の世界ですが、そんなことを意識せずとも聞いているだけで癒しは自然と起こってきます。

現代はテレビやゲームが発達していて、あまり昔話を子供に読み聞かせる機会は少なくなってきています。そんな中、前述の遠野の語り部さんは後継者を育成するという意味もあり、最近では小学校に招かれて子供たちに昔話を語り、それを子供たちに覚えて、実際に話してもらうということをしているそうです。

自分で久しぶりに昔話を読んで癒されてみるのもオススメですが、子供のいる方は短い話でもいいですから、夜に昔話を読み聞かせてあげてください。そのわずかな5分が、後々に大きな癒しとなって子供だけでなく、自分自身にも返ってきます。