降魔大師(ごうまだいし)
≪ 降魔大師(ごうまだいし) ≫

角大師の記事をスタートにはじまった、元三大師のお話もこれで一応最終回となります。平安時代の変身ヒーローの活躍を最後まで楽しんでいただければ幸いです。

一番最初の角大師の記事でも書きましたが、元三大師という方はさまざまな姿に変身したという逸話をもっています。有名な姿としては疫病を祓う「角大師」、田を守り災難を祓う「豆大師」、魔を祓う「鬼大師」があります。

豆大師というのは、別名「魔滅大師」ともいわれており、そのお札には元三大師の小さな姿が三十三体描かれています。
こちらは元三大師がすでに亡くなられてから作られたエピソードらしいのですが簡単に紹介したいと思います。

横川にある元三大師堂に豊作祈願に来たお百姓さんがいました。田植も無事に済んだので、無事に稲が育って豊作になるようにと時間も忘れて熱心に祈願していたところ、気が付くと夜になってしまったので、大師堂に泊まらせて貰うことになりました。

夜が更けるにつれて、雨がだんだんと激しくなり夜中には大豪雨となってしまいました。お百姓さんは自分の田んぼが豪雨であふれた川の水で流されてしまうのではないかと、心配でたまりませんでした。そんな彼の様子をみたお寺の人が「こんなときこそ御大師様にすがるべきだ」というので、それを聞いた彼は一心に朝まで祈り続けました。

朝になってあわてて自分の村へ戻ってみると、やはり川の水があふれ村のほとんどの田畑は壊滅的な状態でした。そんな中、彼の田んぼだけが無事でした。
「なぜ無事なんだ!?」と他の村人に聞いたところ、彼の田んぼに夜明け前に何処からか子供ぐらいの小ささの若い衆が 30人ほどやってきて、田を守ってくれたというのです。

これを聞いたお百姓さんは、御大師様のおかげだ!ということで、さっそく元三大師堂にお礼にいったところ、「御大師様は観音様の化身なので、観音様の三十三化身にならって、三十三人の童子となって救ってくれたのでしょう」とお寺の人に教えて貰ったそうです。

このことがあってから、元三大師が三十三体の姿になったものを豆大師といって、田を守り災難をはらうお札として信仰されるようになったということです。

最後にご紹介するのが鬼大師、別名「降魔大師(ごうまだいし)」です。同じ鬼のような姿でも、角大師がどこか愛嬌があるのに比べて本当に地獄の鬼のような姿をしています。

大師堂にあった由緒書によると、これは魔王の姿なのだそうです。元三大師は自ら強力な魔王の姿となって比叡山とそこで修行する僧侶、そして信者たちを守っているのです。

鬼大師の姿は、元三大師堂の奥深くに秘仏として鎮座しているとのことです。筆者が元三大師堂を訪ねたときに、閉ざされたふすまの奥から聞こえてきた真言は、もしかしたら、この秘仏に対してのものだったのかもしれません。そう考えると、あの鮮烈なまでに清浄なエネルギーにも納得がいく気がします。

このように様々な伝説と姿を持つ元三大師は、漫画で有名になって一躍ブレイクした安倍晴明と同じ平安時代のヒーロー、それも仮面ライダーなどの変身ヒーローの元祖といえるのではないでしょうか?

安倍晴明に比べるとどうしても知名度は劣ってしまいますが、個人的にはもっと有名になってもいいのではと思っています。最後に、そんな元三大師(作中では良源)が安倍晴明と共演している少女漫画を紹介して終わりたいと思います。きちんと鬼に変身したりもしますので、興味がある方は是非見てくださいね。

王都妖奇譚1~7
※元三大師は後半ぐらいから登場します