めっきりと秋らしくなり、町を歩いていると金木犀(きんもくせい)のいい香りが漂ってくるようになりました。金木犀の甘いなんともいえない香りを嗅ぐと、「秋が来たなぁ」と思うのは筆者だけでしょうか?

すでに秋の風物詩となっている感のある金木犀ですが、もともとは中国のもので、江戸時代頃に日本に渡ってきたそうです。
その美しい黄金色の花のせいなのか、それとも秋の名月の頃に咲くからなのかはわかりませんが、金木犀には月にちなんだ伝説がいくつも残っています。

伝説によると月には巨大な金木犀(正確には木犀)の大木が茂っているのだそうです。この木に花が咲くと月が満ちていき、満開になった時が満月となります。月一面を覆う黄金色の花びらをイメージすると、その美しさにうっとりとしてしまいます。

そんな月に茂っていた金木犀が月から地上にやってきた理由も伝説は伝えているのです。
中国の仙女で嫦娥(じょうが)という人がいます。彼女は不老不死の霊薬を飲んだことで、月へと昇れるようになり、そこで暮らすようになりました。そのため道教では嫦娥を月の神として信仰し、中秋の名月には彼女を祀る儀式を行うそうです。

そんな嫦娥が月から下界を見下ろしていたときのことです。ちょうど中秋の名月で、人々は嫦娥が住む月をみあげ、各地では月見の宴が開かれています。そんな観月の名所の一つに嫦娥が目をやると、そこにはあまりにも美しい風景が広がっており、その美しさにつられてついつい踊り始めてしまいました。
嫦娥が踊り始めると、その舞を見ていた彼女の夫、呉剛という神様が金木犀の幹を叩いてリズムをとったのです。すると、その衝撃で天香桂子という月の金木犀の種が地上へとこぼれおちました。このことによって地上でも金木犀が根付くようになったのだそうです。

満月は過ぎてしまい月はかけはじめていますが、欠けゆく月に散りゆく月の金木犀を思い浮かべてみませんか? そして、あらたに金木犀が満開になる11月3日の満月には月を見上げ、金木犀の傍らで踊る仙女の姿をイメージしながら、桂花陳酒を飲むというのはどうでしょう。とても風流で、オリエンタルな月のエネルギーの取り入れ方だと思います。興味をひかれた方は是非お試しあれ。